動物病院で最も多いのは皮膚炎!犬が体をかゆがる原因と治療法とは
動物病院の診察で、犬の症例の中で一番多いのが「皮膚炎」です。皮膚炎にはさまざまな症状がありますが、中でも目立っているのがダニやアレルギーが原因で起こる皮膚炎のかゆみや炎症です。
これらの症状は皮膚を清潔に保てば治る場合もありますが、生活環境やドッグフードが原因で起きてしまうこともあります。今日は代表的な犬の皮膚病やその対策方法、飼い主が心がけたいことなどをまとめてみました。
1.代表的な犬の皮膚炎、どのような症状があるか
犬の皮膚炎は人間と違い全身が毛で覆われているため、犬種によってはなかなか見つけることはできません。しかし皮膚炎かも?と気づくきっかけは「かゆみ」であり、犬が体をかいていることが多いでしょう。体を普段よりずっとかいているときは何らかの皮膚炎が考えられます。
このようなかゆみがおこる皮膚炎の原因は大きく分けて三つあります。「アレルギー」と「ノミなどの寄生虫」、そして「皮膚疾患」による皮膚のトラブルです。ではこの三つについて具体的に見ていきましょう。
1-1.アレルギー性皮膚炎
人間に最近多く見聞きされるアレルギー症状ですが、アレルギーによるトラブルは犬も抱えています。これはアレルゲンと呼ばれる原因物質に犬が触れたり食べたりすることで、体の免疫機能が反応し、皮膚炎を起こしてしまうのです。
アレルギーが原因の皮膚炎の場合は食べ物が原因のことも多く、主に鶏肉や牛肉、卵や魚、大豆と言ったタンパク質を食べることでアレルギー症状が出てしまうことがあります。同じ種類の食べ物を食べ続けていると突然アレルギー症状が出てしまうこともあるので注意が必要です。
ならばそれらを除去したドッグフードなら大丈夫かと思いますが、着色料や防腐剤などの添加物が原因でアレルギー症状が出てしまうこともあります。ドッグフードも違う種類のものにたまには変えるといった工夫が必要です。
・アトピー性皮膚炎
幼い子供が発症してトラブルを起こすことで有名なアトピー性皮膚炎ですが、犬のアトピーもとても増えています。
これは食べ物が原因で発症するものとは違い、呼吸するときにアレルギー物質を吸い込み、過敏症を起こす病気です。はっきりとした原因は分かっていませんが、遺伝的な要因が強いと言われています。アトピー性皮膚炎を持った犬は人間と同じようにかゆみの症状があり、特に夜の間体をかいてしまうことが多いです。
アトピー性皮膚炎の治療には軟膏を塗ることもありますが、ステロイド剤をうまくコントロールして使用したり、抗ヒスタミン剤や脂肪酸などを組み合わせて投与することもあります。
1-2.皮膚疾患による犬の皮膚炎
アレルギーやノミやダニといった原因以外でも、犬の皮膚にかゆみを生じ皮膚炎が起きてしまうこともあります。その原因として常に犬の皮膚に潜伏している「菌」があげられます。
多くの場合通常は潜伏しているだけの菌なので問題はありませんが、体の免疫機能が落ちたり、ノミにかまれて皮膚が弱っているときなどに皮膚炎などの症状が起きます。ではどういった症例が多いのが見ていきましょう。
・細菌性皮膚炎
細菌性皮膚炎は赤い発疹が現れたりかゆみが出たりする皮膚炎です。皮膚にいる常在菌が感染を引き起こし、皮膚の上で増殖することによりかゆみや炎症を引き起こしてしまいます。ひどくなると化膿してしまうことも多く、抗生物質を投与することが必要です。ただ元からアトピーやアレルギー疾患を持っている犬が細菌性皮膚炎に掛かってしまうと、なかなか完治できないこともあります。
・真菌性皮膚炎
こちらは犬の皮膚に潜伏している「カビ」が引き起こす皮膚炎です。普通は皮膚のバリア機能が働いてカビの感染を抑えているのですが、免疫機能が落ちたり外的要因がもとになって皮膚のバリア機能が破られた時にカビが感染してしまいます。治療は数か月続くことが多く、長期に渡ったケアが必要になります。
・脂漏症(しろうしょう)
これは「マラセチア皮膚炎」とも呼ばれる皮膚炎であり、マラセチアという常在菌が活発化したときに起こる皮膚炎です。症状としては脂っぽくなりべたついたようなフケが出てかゆみが広がるタイプと、乾燥したフケが出て皮膚の表面がかさつくタイプがあります。
脂漏症になったときは症状に合わせて犬用のシャンプーも変える必要があります。また食事が原因で発症することもあるので、ドッグフードの種類を変えてみることもあります。
・膿皮症(のうひしょう)
こちらは犬の皮膚に常在している「ぶどう球菌」が大発生して起きる皮膚炎です。最初は膿を持ったような小さな発疹が現れ、次第に大きな発疹へと変わり広がっていきます。感染した皮膚を放っておくと無数の穴が空いたり、膿が悪臭を放ったりするので、見た目的にも恐ろしい皮膚炎です。
治療法としては抗生物質を飲ませることが一般的です。また殺菌性の強いシャンプーを使うことと保湿剤を使い、肌のバリア機能を高めることも必要です。
1-3.ノミが原因の皮膚病
犬の皮膚病の中でも多いのがノミによるものです。犬はノミにかまれることによりアレルギー反応を起こし、かゆみなどが出て皮膚炎につながります。
またノミは単なる皮膚炎を引き起こすだけでなく、かむことにより犬に病原体を感染させることもあります。伝染力も強いため、一匹の犬がかまれることにより猫や人間にもノミの影響がでることがあり注意が必要です。今では予防薬を犬に飲ませることにより、多くの場合ノミによる感染症から身を守ることができます。
・疥癬症(かいせんしょう)
疥癬症(かいせんしょう)とは「ヒゼンダニ」というダニによる皮膚炎です。これは皮膚炎の中でもかなり強いかゆみを引き起こし、かき続けることで皮膚の状態がさらに悪化してしまいます。
また恐ろしいことに疥癬症になった犬からさらにほかの犬へとうつることもあり、同様にヒゼンダニは犬から人間へ寄生してしまうこともあります。この皮膚炎に対処するにはまずは犬に寄生しているヒゼンダニを退治することが必大切です。治療としては効き目の強い駆虫剤を使用し、皮膚の炎症を抑える治療を平行して行います。
・毛包虫症
毛包虫症とはアカラス症、ニキビダニ症とも呼ばれる寄生虫による感染症です。もともと毛包虫自体は犬の皮膚に常在しているダニです。普段は犬に害を及ぼすことはないのですが、犬が病気にかかったりして免疫力が落ちると、常在していた毛包虫が増殖し、かゆみの症状が現れます。疥癬症同様に駆虫剤を使った治療を行いますが、毛包虫症の場合犬の体自体が弱っていることも多く、病気の治療を同時に行うこともあるでしょう。
2.犬の皮膚炎、その対処方法とは
このように犬の皮膚炎と言うのはさまざまな種類があり、普通に生活をしているだけでも多くの症状を発生してしまうことがあります。完全に予防することは難しいのですが、飼い主が気を付けることにより防ぐことのできる皮膚炎もあるでしょう。
2-1肌は弱いので清潔を心がける
一見すると多くの犬は体が毛で覆われ、皮膚も丈夫そうに見えます。しかし肌に注目するととても皮膚の層は薄くデリケートです。毎日ブラッシングをして毛並みを整え、汚れやホコリを皮膚にためないようにしましょう。
またシャンプーで清潔な肌を保つことは、ダニの予防にも繋がります。しかしあまりに洗いすぎると刺激を起こし、かえって皮膚炎を発症する原因にもなります。適度なシャンプーに加え、最近では犬用の肌ケア商品も多く売られていますから、そのようなものを併用して使っても良いでしょう。
2-2.寄生虫にも要注意
犬はダニやノミによって寄生虫がついてしまうこともあります。それがただのかゆみのある皮膚炎だけで済めばよいのですが、中には人に寄生して失明などの深刻なケースを引き起こしてしまうこともあります。
そのような寄生虫から身を守るには、まずは予防が欠かせません。生活環境を清潔にし、犬には定期的に駆虫薬を投与しましょう。市販品における駆虫薬も多くありますが、処方されたものと比べると効果が少ないこともあります。年齢や体重によっても処方する量は変わってきますので、きちんと動物病院で診察を受け、処方された駆虫薬を利用するようにしましょう。
2-3.軟膏を舐めてしまう場合には
犬が皮膚炎を引き起こした場合、状況によっては皮膚に塗る軟膏を処方されることもあるでしょう。しかし塗った後にその患部を犬が舐めてしまうこともあります。軟膏によっては舐めて体内に入ったら、健康被害が出てしまいそうな薬もあり心配になりますよね。
あまりにも舐めてしまうときは、エリザベスカラーや術後服といった保護具を使っても良いでしょう。動きにくい、落ち着きがなくなるといったデメリットもありますが、皮膚の状態が悪いときに舐めてしまうと、薬と唾液が混じり治りが遅くなってしまうこともあります。
また多少舐めても大丈夫と獣医さんに言われた場合でも、患部を清潔に保つことが大切です。ガーゼで唾液を拭くなどのケアをし、犬が嫌がらないようなら軽く包帯などでカバーしても良いでしょう。
2-4.犬に人間の皮膚炎軟膏を使っても良いか?
犬の皮膚炎で動物病院に行くと、保険が利かないため軟膏一本買うにもとても高くついてしまうことがあります。
そのためただかゆがっているなら、人間が使っている皮膚のかゆみ止めを使いたいと思う人もいるでしょう。結論としては使って良い場合もありますが、それで皮膚炎が解決するとは限りません。特にノミなどが原因の皮膚炎の場合、かゆみを抑える効果はあってももともとの原因を取り除いていないので治療していることにはならないのです。
また犬の皮膚は薄くデリケートなため、人の軟膏をたっぷり塗るとかぶれてしまうこともあります。やはり犬には犬専用の処方された薬を使ってあげるのが、治療の近道と言えます。
まとめ
犬を飼う上で必ず起きる皮膚トラブル。多くの場合命に関わるような病気は少ないですが、寄生虫が原因で飼い主にも影響が出ることもあります。
そのような皮膚炎は早期発見、早期治療が大切です。早めに発見するには日ごろから犬とスキンシップを図っておくことが重要です。同じ個所をかき続けている、なんだか落ち着きがないといった動作を発見することにより、犬の皮膚炎も早めに見つけることができます。犬とその家族の健康のためにも、日頃から生活環境を整え、定期的な健診をするように心がけましょう。